システマティックレビューとは?

上の図は、ネット上に公開されているニューヨーク州立大学が作成した図を、専門用語や説明を省略して、信頼性の高低を中心にわかりやすいように簡略化して示したものです。

フッ素洗口についての最も信頼性の高いシステマティックレビューは、2004年に出された「フッ素入り歯みがき剤を使っていれば、その上フッ素洗口をしても効果の上乗せは7%。有意差はない」つまり、効果の上乗せがあるとは認められない、誤差の範囲内、ということです。

では、このシステマティックレビューとは、どのようにして出されたものなのでしょうか。

フッ素についてのシステマティックレビューは、イギリスにある「コクラン共同計画」という国際団体によって編纂されました。

まず最初に、フッ素洗口やフッ化物の歯科応用についての論文を、世界中から集めてきます。

そして、その論文の実験方法や条件設定のしかた、結論の導き方などについて点検し、問題のなかった論文のみを残します。ちなみに日本の集団フッ素洗口を「効果あり」とした論文は、この時点で残らなかったようです。

こうやって残った論文を統計的手法等を含めた様々な方法で総合判断した結果作られるのが、システマティックレビューなのです。お医者さんにとっては、治療方針を決める際などに、重要な指針となるものです。

もうひとつ大切なことは、このシステマティックレビューは、個人の論文より遙かに信頼性が高いものである、ということです。

例えば皆さんは、同じ病気なのに、お医者さんによって解釈が違う、という経験をしたことはありませんか?新型コロナ感染症でも、「かぜと同じ程度の病気だ」というお医者さんもいれば、「いやいやかぜとは違った点がたくさんあり、同じとは言えない」というお医者さんもいます。

陰謀論は問題外だとしても、専門家であるお医者さんの意見は、必ずしも一致するとは限らないのです。だから、「専門家の意見」は、信頼性から言えば、下から2番目です。

だからこそ、医学的な信頼性の高いシステマティックレビューが大切であり、子どもたちの未来のためには、科学的な根拠に基づいた方法を選択するのが当然なのです。

ただし、コクランのシステマティックレビューは、2004年以外にも、2016年にも出されています。
2004年のものは、日本の子どもたちと同じ条件「フッ素入り歯磨剤を使っている人」を対象にしたものですが、2016年のものは、日本の子どもたちとは違って、「フッ素入り歯磨剤やフッ素入り飲料水を飲んでいる人」を対象にしたものです。
科学的な正確さを求める場合、対象者の条件はとっても大切なんです。