フッ素洗口が分断を作る

とある地域のお話です。
この地域で突然、学校でのフッ素洗口実施の話が湧き上がりました。
もちろん、言い出したのは教育委員会です。

この件は、さっそく新聞に取り上げられました。
新聞は、フッ素洗口でむし歯予防ができることと同時に、使用する「工業用フッ化ナトリウム」が毒性の強い物質で、子どもたちにどのような影響があるのかわからない、と指摘しました。
さらに、地域の議会で、フッ素洗口の問題を指摘する議員さんが現れたりと、それなりの騒動になりました。

新聞記事を読んだり、教育委員会の説明を聞いたり、議会の様子を聞いたりした保護者たちは混乱しました。
どちらの言い分が正しいのか、洗口でどのくらいの害があるのか、多くの地域住民を巻き込んで、様々な意見が飛び交いました。

しばらくすると、フッ素洗口賛成の家庭と、反対の家庭がはっきりし、保護者間で意見の対立が起きるようになったのです。
保護者がけんかすると、子どもたちもけんかをします。
学校でも、クラス内で反対派と賛成派が言い合いをするようになり、お互いに「意見の合わない子どもとは遊ばない、保護者とも付き合わない」という現象がおきました。

フッ素洗口を実施することで、子どもも保護者も巻き込んで、必要の無い分断が発生してしまったのです。

この話は、かなり昔の話ですが、近年のようにSNSやYouTubeなどの媒体が発達し、簡単に誹謗中傷がおきてしまう状況では、何が起こっても不思議ではありません。
実際に誹謗中傷が原因で、小中学生が自殺する、という事件もおきているのですから、子どもたちに一斉にフッ素洗口を強制することは、非常に問題だと言えるでしょう。

一方で、フッ素洗口を実施するかどうかは、あくまで個人が選択の権利を持っているものであり、それは十分保証されなければなりません。
集団で実施することで、周囲の意見に惑わされたり、集団圧力で「しない」と言えなくなることもあり得るでしょう。学校とは、そういう特性を持っている場所です。
だからこそ、教員は十分な配慮を要求されるのです。

しかし今、学校現場は大量の役割を抱え込んでいて、教員は悲鳴を上げています。
地域によっては学校で起きる様々な問題に対応しきれず、弁護士配置や学校の外に相談窓口を設けるなどの対策を行っているところすらあります。
そんな学校に、さらに分断の「タネ」を持ち込もうというのが、フッ素洗口です。

こんなこと、いいわけありませんよね。
子どもも保護者も教員も地域も、心穏やかにそれぞれの役割達成に専念したいものです。